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橋之介のブリッジれぽーと

橋之介のブリッジれぽーと(12)


 

 

橋之介です、よろしくね!
こんにちは、橋之介です。このところすっかり秋めいてきたよね。秋はボクの大好きな季節なんだ。なんてったって食べ物がいつもよりもっとおいしく感じられるから!サンマ、果物、それに栗。ボクの大好物がたーくさん出まわるんだ。それに秋は勉強にもスポーツにも身が入る気がするの。もち、ブリッジもね。この秋はもっともっと上達したいなあ。
全員集合!
 
楽しい夏休みも終わって新学期がはじまったけど、ママのブリッジ教室はしばらくお休みだった。っていうのも、秋はいろいろイベントがあってみんなそれぞれ忙しかったから。
まずはホッキョク君。運動会でも大活躍だったけど、この秋は毎週末いろんなスポーツの大会に出まくってたんだ。どの試合でも、優勝するか、すごいプレイでみんなを驚かせるか、とにかく目立ってた。空手の試合はボクも出たけど、はじめに負けちゃった。ホッキョク君はもちろん優勝、カッコイイよね。
カーチャちゃんはバレエの発表会で忙しかった。ウィニーと同じスタジオで習ってて、ウィニーのあこがれの先輩なんだ。ボクも発表会を見に行ったけど、フワフワしたスカートでくるくる回ってたな。これからピアノの発表会もあるんだって。勉強もブリッジも得意だけど、いったいいつ練習してるんだろう。
エリーちゃんはスイミングスクールの強化選手になってがんばってる。フィギュアスケートでも選手で、そろそろどちらをとるか決めなきゃならないって悩んでるんだ。エリーちゃんは小さいけどパワフルだからボクは水泳のほうが向いてると思うけど、おこられそうだから言わないことにしてるんだ。
ツキノワくんは、夏休みに書いた読書感想文でナントカっていうすごい賞をもらったんだ。剣道の試合はがんばったけどすぐ負けちゃったみたい。最近、ドイツ語の勉強をはじめたらしく、いつも何かブツブツつぶやいてるよ。
そしてこのボクも、秋らしくいろいろ挑戦したんだ。運動会では応援団でがんばったし、空手の試合にも出たしね。作品展に出品するためにいろいろな果物を集めて「秋の果物」っていう絵も描いたよ。あの絵は描き終わってからがおいしかったなあ。
でもこうしたイベントもようやく一段落したから、今日からまた土曜の午後のママのブリッジ教室を再開することになったんだ。しばらくブリッジしていなかったら忘れちゃったかもってちょっぴり心配だけど、またがんばらなくっちゃね。
 
 
ピンポーン!あ、チャイムが鳴ってる。そろそろ2時だからみんなが集合してくる時間だね。
「こんにちわぁ!」いちばん乗りはカーチャちゃんだ。「おばさま、お久しぶりです。またどうぞよろしくお願いします」カーチャちゃんはかわいらしくペコリと頭を下げた。
「いらっしゃい、どうぞおあがりなさいな」ママとボクがカーチャちゃんを出迎えていると、他のみんなもぞくぞくとやってきた。
「こんにちは!」「よろしくお願いします」みんなでわいわいあいさつを交わしながら、居間に用意したテーブルについた。
エリーちゃんのナイスプレイ
 
「みんな久しぶりだから、とりあえずミニブリッジで何回かプレイしてみましょう」ママがみんなに言った。「そして、何かわからないことがあったら、そのことについて勉強していきましょう」
「はーい!」元気よく返事をして、さっそく抜け番を決めるカードドローをした。最初の抜け番はカーチャちゃんだ。他のみんなはそれぞれの席に移動して、 ママが用意しておいてくれたボードから自分のカードを抜き出した。ボクのパートナーはツキノワ君、相手ペアはホッキョク君とエリーちゃん。最初のディクレアラーはエリーちゃんに決まり、ホッキョク君がダミーをひろげた。
 
図1
エリーちゃんは ダミーとにらめっこして、「えーっと、ノートランプにするわ」と切り札なしを指定した。「ゲーム宣言はどうする?ダミーも強いぜ」とホッキョク君がたずねる。「そうね、せっかく強いダミーですもの。ゲーム宣言します」エリーちゃんが同意すると「そうこなくっちゃな!」と、ホッキョク君がウィンクした。ってことは、最初にリードするのはボクだね。ボクはダミーと自分のハンドを代わるがわる見つめた。
 
図2
ボクの自慢のスーツはだ。ダミーにがあるけど、残りの絵札は3枚もボクの手の中にあるもんね。を追い出せば、あとでボクのが取れるかも…。ボクはに決めて、をリードした。最初のトリックでエリーちゃんはダミーからをプレイ、ツキノワ君からはが出てきた。すると、エリーちゃんは不思議そうな顔をしながらで勝った。あれれぇ?を出したの、失敗だったのかしら?に勝たれちゃったってことは、損したってことだよね?を追い出すはずだったのに、に勝たれちゃうなんて…。
 
最初のトリックを勝ったエリーちゃんは、次に自分の手からを出してきた。ボクはの2枚しかないから、いま勝たないといけないと思ってで勝った。またボクがリードする番だ。他に何も思いつかなかったからボクはを続けることにして、今度はをリードした。エリーちゃんはこのトリックをダミーので勝った。
このあとエリーちゃんは、とても上手にダミーに入ったり、自分の手に戻ってきたりしながら、で5つ、で2つ、で3つと、残りのトリックをぜーんぶ取りきった。最初のほうで勝ったを合わせると合計12トリックだ。NTのゲームは9個取ればいいので、ずいぶん余分に勝ったことになる。
「わお。すごいや、エリーちゃん。すごく上手にプレイしたねえ」ダミーのホッキョク君が、歓声をあげた。「ほんとうに上手だったわ」ママもエリーちゃんをたたえた。みんなもうなずいている。
「じゃあ、いまのハンドで何か質問のある人はいる?」ママがそう続けたので、ボクは思い切ってきいてみた。
「エリーちゃんはすごく上手だったと思うんだけど、ボク、最初のリードで何かまちがえたような気がするの」
するとママがふふっと笑って「そうねえ、そうかもしれないわね。いい質問が出たので、今日は少しリードのお勉強をしましょうか」とみんなに提案した。
何をリードする?
 
「みんな、いまプレイしたハンドをダミーのように全員ひろげてみて」ママの指示どおり、みんながハンドをひろげた。
 
図3
「最初にリードしたのは橋之介だったわね。どうしてを出そうと思ったの?」「はボクの自慢のスーツだったから」さっき考えたことを思い出しながら、ボクは質問に答えた。「とても内容がよくて5枚もあったから、がいつか取れるようになるといいなあって思ったんだ」「自慢のスーツがあるときに、それを出すのはとてもいいアイデアよ。でも、どうしてを出したの?」ママにまた質問されて、ボクはちょっと考え込んだ。 「うーん、どうしてかなぁ。絵札をいま出すのはちょっともったいないと思ったのかも。ダミーのの下はで小さなカードだったし…」だんだんしどろもどろになってくる。「そうしたら、エリーちゃんのに勝たれちゃったのよね」うっ…。ママはボクの痛いところを遠慮なくついてくるなあ。
 
「そうなんだ。それで、何か失敗しちゃったのかなあって思ったの。ボクにはに勝てるカードが3枚もあったのにって」ママはふんふんとうなずきながら話を聞いている。
「そうね、私もで勝てちゃったから、ちょっとびっくりしちゃったもの」エリーちゃんがボクをなぐさめるようにつぶやいた。
「だから、で勝ってまたリードの番になったときにはを出したんだ。今度は損しちゃいけないと思って」ボクがそう続けると、ママはにっこりした。
リードのお約束
 
「実は、リードするときにはいくつか約束ごとがあるの」いよいよ、ママの説明がはじまった。「そのひとつが『絵札が3枚以上続いているスーツから打ち出すときには、いちばん上のカードを出しましょう』っていうものなの」
「さっきの橋之介の と絵札が3枚続いていたから、この約束ごとにちょうど当てはまるケースだったの」ママが続ける。「ちょっともったいないかもしれないけど、なぜ最初から強い絵札を出すかわかる?」
「損しちゃうかもしれないから!」まるで合図があったみたいにみんながいっせいに答えたので、ママはころころと笑った。
「そのとおり!さっきみたいにに勝たれてしまうかもしれないものね。立派なスーツで攻めて相手を困らせようとしているのだから、を追い出すためにを出すの」
「どうして上からなんですか?」いつもどおりすごい勢いでメモを取っていたツキノワ君が手を止めてたずねる。「連続しているなら、でもでも同じことですよね?」
「さすがスルドイわね、ツキノワ君」感心したようすでママはツキノワ君を見つめた。「だから、約束ごとなのよ。 を持っているときに、あるときは、あるときはでは、パートナーには何も伝わらないでしょう?でも、続いている3枚以上の絵札からは必ずいちばん上を出すって決めていれば、が出てきたら『ああ、下にもあるなあ』ってパートナーにもわかるじゃない?」
「なーるほど!」ホッキョク君が大きくうなずいた。ホントだ、そういう約束ならとってもわかりやすいね。「これはとても便利な約束ごとですね」抜け番で見ていたカーチャちゃんも話に加わる。みんな、新しいことを勉強するのが楽しいみたい。
 
図4
「ただね、ひとつ例外もあるの」ママはさらに続ける。「絵札が3枚以上続いているスートからのリードはいちばん上からと言ったけど、 と続いている場合には、ではなくから出しましょうね」「どうしてですか?」すかさずエリーちゃんがたずねる。  「さあ、理由はよくわからないけれど、これも約束ごとなのよ。たぶん、は切られない限り必ず勝てるカードだから、下に絵札のおともがいなくても、いまリードして勝っておきたいこともあるからじゃないかしら?そういうときと、絵札が続いているときのを区別したいのかもしれないわね」あれれ?だんだんややこしくなってきたぞ。
 
ボクはそわそわしてきて、こっそりみんな顔をのぞいてみた。そしたら、みんなもなんだかぽかんとしてたから、ちょっぴり安心した。
「まあ、私ったら!」みんなの様子を見てママがあわてて言った。「ごめんなさいね、あまりむずかしく考えなくていいのよ。ただ、これが出たらこういう約束ってことだけ覚えて、それを使ってみてちょうだいね」
うん。それならだいじょぶそう。みんなもほっとしたみたいだ。
「えーっと、絵札が3枚以上続いているときは上から出す、ただし の場合はから出す、だネ!」ホッキョク君が復習するように繰り返した。「よくできました」
「絵札じゃなくてもいいんですか?たとえば だったら、やっぱりを出すのですか」と、カーチャちゃんがママにたずねる。「これもいい質問ね。そのとおりよ。じゃあ、もう少しプレイしてみましょう」ママの合図で、ボクたちはゲームを再開した。
 
今日のおやつは・・・  
 
抜け番が一巡したところで、「そろそろ休憩しましょう」とママの声がかかった。待ってました、お楽しみのおやつタイムだ!今日は、ママお手製のスイートポテトに塩煎餅、それにあったかいミルクティーという組み合わせ。おやつも秋らしいよね。
みんな手を洗ってスイートポテトをぱくついた。ひとしきりホッキョク君のいろんな試合での武勇伝が披露されて、それから運動会のときの話で盛り上がった。ママのブリッジ教室はこの時間が楽しいんだよな~。
笑いすぎてお茶でひといきついていると、ツキノワ君が思い出したように言った。「さっき、約束ごとは他にもあるっておっしゃられましたよね?たくさんあるんですか?」
「ええ。リードだけじゃなくて、他の場面でもいろいろな約束ごとがあるわよ」
「ひょえー、そんなのぜんぶ覚えるの、ボクには無理だよう」思わずボクがつぶやくと、ママが笑いながら続けた。「大丈夫。一度にたくさん覚える必要はないわ。便利なものから順番に少しずつ、実際に使っていきながら覚えていきましょうね」
そっか、それでいいんだ。それならだいじょぶかも…。ボクが心の中で胸をなでおろしていたら、すかさずカーチャちゃんが「私は早くいろいろな約束ごとをたくさん覚えたいわ!」と目を輝かせた。「私も!」エリーちゃんもカーチャちゃんに賛成する。女性陣はホントたくましいなぁ。ボクはおちこぼれちゃいそうだよ、とほほ。
「約束ごとを覚えることももちろん大切だけど、いちばん大事なのは楽しくブリッジすることよ。だってゲームなんですもの!」
「そ、そうだよね、『習うよりやろうよ』だよね」
「…。それを言うなら『習うより慣れよ』だけどね」ママがまた笑う。
「とにかくこの教室ではこれからも楽しくやっていきましょうね」
「はーい!」またみんなの返事がそろった。ボクたちみんな、なかよしって証拠だね!みんなとなら、約束ごとのお勉強もきっと楽しいかも!!
 
今日のきょうくん(教訓)
絵札が3枚以上続いているスーツから打ち出すときには、いちばん上のカードを出す。
ただし、A・K・QからはKを出す。
 
 
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