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橋之介のブリッジれぽーと

橋之介のブリッジれぽーと(15)


 

 

ふんだり、けったり
みなさん、こんにちは!橋之介です。
新緑の季節になって毎日気持ちいいね。これからの季節は、ボクたちクマはますます元気が出てくるんだよ!でも、元気にいろいろやろうって思ってたはずが…。
今日は、ボクの大失敗のお話をきいてください。
ママとパパから大目玉
 
今日は金曜日。待ちに待った週末だ。それに、もうすぐゴールデンウィークだし。何して遊ぼうかなあ。いろいろしたいなあ。それより、今日のおやつは何だろう。
ああっ!!!(ごん!)
学校の帰り道、そんなことを考えながらよそ見していたら、おとなりのおうちのへいの角にぶつかっちゃったよ。いたーい!アブナイ、アブナイ。気をつけなきゃね。

「ただいまぁ!」おっきな声でリビングに入っていくと、ママとパパがお茶を飲みながら何か話してた。
「あれ、パパ、おかえりなさい。早かったんだね!おみやげなあに?」パパは2週間の出張に行ってたんだ。今日が帰ってくる日だったんだね。すっかり忘れてた。
パパとママはやれやれって感じの顔でボクを見つめてた。「先に手を洗ってきて、ここにお座りなさい」ママが静かに言う。うーん、なんだか雲ゆきがあやしいぞ。
手を洗ってテーブルに座ると、ママがホットミルクのマグをボクの前に置いた。パパはママのとなりに座り直していて、こう口を開いた。「橋之介、勉強はがんばってるかい?」
ぎくっ!そっかー、勉強のことかあ。この頃、ちょっと勉強をおさぼりしてたんだよね。怒られちゃうかなあ。
「う、うん。いつもと変わらないよ?」しどろもどろで答えると、ママがじろっとボクの目を見てそっと言った。「本当かしら?この頃、テストも見せてもらってないけど?」
ママがこんなふうに静かに話すときは、チョー機嫌が悪いっていうしるしなんだ。それにしても、まずいなぁ。こないだ算数のテストで2回続けてひどい点を取っちゃったんだよね。ママに隠してたのに…。
「あ、はい。テストはちょっと点数が下がちゃった」
「今日、ウィルソン先生からお電話をいただいたのよ、橋之介」ママがため息をつく。
ひょえー!先生から電話があって、ママにテストのことがバレちゃってるんだ!これは、マジ、ヤバイ!
 
「かなり悪い点数だったそうだな。しかも2回も」パパの声も静かだけど、もっとこわい感じ。ボクはもじもじしながら、両手の中のマグカップをじっと見つめてた。
「それにこの頃忘れ物も多いわね。ママが知ってるだけでも先週と今週で3回よ。知らない分も入れたらもっとかもしれない。少し、落ち着きがないんじゃない?」
「下を向いていないで、こっちをちゃんと見て話を聞きなさい!」パパの声が大きくなって、ボクはびくってしちゃった。
「ママに聞いたけど、ブリッジは、というかブリッジだけはがんばっているそうじゃないか。それはいいことだよ。でもちゃんと学校の勉強もする約束だぞ。約束をきちんと守れないなら、しばらくブリッジは禁止だな」
そんなあ。明日だって、ママのブリッジ教室がある日なんだよ。みんなになんて言えばいいの~。
「うわぁ、ごめんなさい。算数のテストで悪い点を取りました。ちゃんと準備しなかったから、よくわからなくてむずかしかったの」ボクは涙声になっちゃっ た。「ブリッジはみんなと一緒に習ってるから、ボクだけやらないわけにはいかないよう~。学校の勉強もちゃんとしますから、禁止にしないでください」ボクはパパとママに頭を下げて、一生けんめいにお願いした。
「算数の再テストがあるそうね」ママが相変わらず静かな声で言う。「ゴールデンウィークのあいだ、遅れていた勉強を取り戻すためにきちんと勉強するならブリッジもやっていいわよ」
「ええー。ゴールデンウィークにお勉強なのお?」思わずボクは口をとんがらせちゃったけど、ママとパパのあきれたって顔にすぐに気がついた。マズイ!空気読まなきゃ…。「あ、ううん。わかりました。一生けんめい勉強して、今度はいい点数取ります。だから、みんなとブリッジのお勉強もさせてください」本心から、もういちどお願いした。
「よし!男に二言はないぞ、橋之介。ゴールデンウィークはパパとママで交代で勉強をみっちり見るからな!」パパは立ち上がって、ボクの背中をぽんとたたいた。でも、なんだかちょっぴりうれしそうだよ。
「じゃあ、冷蔵庫にプリンが冷えているからおあがりなさい。食べたら、まずは今日の宿題をするのよ」ほっ!ママもちょっと機嫌がなおったみたい。よかったー。
やっぱり自分が悪いんだよね。よーし!勉強もがんばらなきゃ。今日は宿題もたくさんあるんだよね。でも、その前にママの特製プリンをいただこうっと!
 
次の日、土曜日の午後、いつもの仲間がママのブリッジ教室に集まってきた。ママとパパとの約束どおり、夕べと今朝で宿題はすませたよ。でも、明日はパパと算数の特訓だって!とほほ…。
いつものようにカードドローをしてペアを決めた。最初の抜け番はホッキョク君。ボクのパートナーはツキノワ君、エリーちゃんとカーチャちゃんの女の子ペアと対戦だ。
最初のボードはカーチャちゃんが3NTをジャストメイク。あいかわらず、カーチャちゃんは上手だなあ。次のハンドはエリーちゃんが4を5メイク。今日は女の子たち、絶好調みたい。
「橋之介、ツキノワ君、がんばれよ!」横で見学していたホッキョク君が押され気味の男子ペアを応援してくれる。次はボクがディーラーだ。
 
図1
11点しかないからボクはパスした。左どなりのエリーちゃんもパス。3番手のツキノワ君が1とオープンした。すると、右どなりのカーチャちゃんが1とオーバーコール。ボクはパスした中では強い手だし、が5枚あるからかまわず1!これってゲームへのお誘いだよね?ようし、反撃するチャ~ンス!ボクは4をビッドした。エリーちゃんからは2がリードされて、ツキノワ君がダミーを開いた。
 
図2
ボクはダミーとにらめっこした。せっかくのゲームだもん、ようく考えなくちゃね。はぜんぜん負けないですみそう。はオープニングリードがきたけど、オーバーコールした右手のカーチャちゃんがきっとAを持ってるね。だからあとでボクのKが勝てそう。うまく行けば、後でダミーのちっちゃいをボクのの下に捨てて、はそれ以上負けないですむかも…。それからはAだけが抜けているから、きっと負けるのはひとつだけだね。ってことは、のAにさえ負ければあとはOKだ。ようし、がんばるぞ!
予想どおり、のリードをカーチャちゃんがAで勝った。次にカーチャちゃんはQを返してきた。ボクはもちろんのK。すると、エリーちゃんにでラフされちゃった。
 
あ、そうか。エリーちゃんはが1枚しかなかったんだ。まあ仕方がないと思ったけど、ここでエリーちゃんはに代わった。ダミーからKを出すと、カーチャちゃんはAで勝ち。今度はの4を出してきた。エリーちゃんはまたラフ。
あーあ!もう4つ負けちゃったよう。エリーちゃんからはまたが出てくる。ダミーのQで勝とうと思ったら、今度はカーチャちゃんがをラフした。
そんなぁ。この後、カーチャちゃんはJと続けたけど、今度はボクは大きなでラフ、残りのトリックはぜんぶ取れた。でも、開幕5連敗で4のゲームは2ダウンになっちゃった。
「とっても上手にデイフェンスできたわね」ママが女の子たちに声をかけた。
「すごいわ、カーチャちゃん。私、絵札が1枚もなくて0点の手だったのに、2回もラフしてトリックを勝っちゃった!」エリーちゃんは興奮したようすだ。
「いまのプレイはクロスラフっていうのよ」ママがみんなに声をかける。「みんなの手を開いてみてちょうだいな」全員がテーブルにいま終わったばかりのハンドを広げてみた。
「NSの手はゲームができそうなんだけど、相手のカードの位置がこういうふうになっているときはダメなの」
 
図3
「エリーちゃんはパートナースーツのがシングルトンだから、ラフできると思ってリードしたのよね。そして予定どおりに2巡めのをラフした。そのあとを返してまたをラフした」うんうん、そうだったね。みんなも真剣にママの話を聞いてる。
「次にまたを出したけど、それはなぜかしら?」ママがエリーちゃんにたずねた。
「そうですね、はダミーにAがいるから見込みがないと思ったんです。それにカーチャちゃんが4を出してきたから。カーチャちゃんはきっとのJも持ってるはずで、この時点でJより大きいカードはみんな出てたから、私が切らなくてもJは勝てたと思うんです。でも、わざわざカーチャちゃんは4を出してきた。だから、もしかしたらをラフできるのかなぁって思ったんです」
 
「そうなの!わかってもらえてうれしかったわ」カーチャちゃんがエリーちゃんにウインクした。
「2人ともすばらしいわ」ママが目を細めた。「カーチャちゃんのJは確かに勝てたでしょうけど、その後にラフはできなかったはずだから、Jを出した場合は4トリックしか取れなかったわね。でもちゃんとをラフできたから、ディフェンス側は5トリックも取ることができた。これぞ、パートナーシップね」
「なーるほど。カーチャちゃんの機転はすばらしいですね」ツキノワ君も感心しているみたい。
「こういうふうに交互にラフすることをクロスラフっていうのよ」ママが教えてくれた。「へー、クロスしてラフするから、クロスラフか!なんかカッコイイじゃん!」ホッキョク君が手をたたいた。
「そうなのかー。うまくやられちゃったんだね」ボクは2ダウンもしてちょっとショックだったけど、これは女の子たちが上手だったんだから仕方がないとあきらめた。
「クロスラフはデイフェンス側だけでなく、ディクレアラーが自分とダミーのハンドを使って交互にラフする場合にも使える言葉よ。みんなもこれまでにそういうふうにプレイしたことがあるでしょう」ママが続けた。
「そういえば、そういうこともあったなぁ。でもプレイの名前を教えてもらえるとなんかいいよね。技って感じがするう~」ホッキョク君はクロスラフって言葉が相当気に入ったみたい。ツキノワ君は例によって、すんごい勢いでメモをとってる。ボクもなんだかお勉強したあって感じだよ。ブリッジの勉強は楽しいね。  
チーン!  
みんなんでわいわいしてたら、オーブンの音がした。そういえば、さっきからいいにおいがしてたよね。
「あら、アップルパイが焼き上がったみたい。ちょっと早いけど、おやつにしましょうか」ママの言葉にみんなが目を輝かせた。
 
手を洗って、みんなでテーブルについた。お昼寝から目がさめたウィニーも一緒だよ。焼きたてのアップルパイとはちみつたっぷりのミルクティーをいただいていると、ホッキョク君が思い出したようにこう言った。
「そういえばさぁ、理科の宿題、アレ、案外おもしろいな!」
「ああ、月の満ち欠けの観察ね。私も実は毎晩楽しみなの」カーチャちゃんも続ける。  
はっ!そうだった。いま理科で天体のことを勉強していて、7日前の満月の日から29日間、毎日決まった時間に月の満ち欠けをスケッチするっていう宿題があったんだ。すっかり、忘れてたよう~。
「ボクも実ははまってます。月だけじゃなくて、明けの明星、宵の明星の観察もはじめちゃって。おかげで最近、寝不足です」ツキノワ君がこういうと、エリーちゃんも「さすがねえ、ツキノワ君は。でも、私もお兄ちゃんの天体望遠鏡でいろいろ観察するのが楽しみなの」と続ける。  
ふと気づくと、ママがボクをじぃーっと見てた。「あら、そんな楽しい宿題があったの?」にこにこしながらも目は笑ってない。「橋之介はどこで観察してるの?」
もう、ダメ~。
「えーっと、えーっと。あのう~。実は忘れてました」ボクは正直に言った。
「ええ?!橋之介君、忘れてたの?」エリーちゃんが目をまんまるにした。「もう7日も前よ。どうするの?」
「橋之介!」ママの大きな声が飛んできた。怒ってもいつもは静かなこわーい声なのに、ついにどなられちゃったよ。
「うわあ!ごめんなさあい!!!」ボクは手をあわせてママにあやまった。すると、みんなはなぜかくすくす笑ってる。ボク、そんなに変なカッコしてたかな?
「っもう、お兄ちゃんったら。みなさんに笑われちゃったじゃない」ウィニーにまで笑われてしまった。
「とほほ。さっきはクロスラフでやられちゃうし、昨日は勉強のことでお目玉くらうし、今度もまた…。まさに『ふんだり、ぶったり』だぁ」ボクがそうつぶやくと、みんなはさらに大爆笑。
「それを言うなら、『ふんだり、けったり』でしょ!もう、橋之介君、おもしろすぎる~」エリーちゃんにまたつっこまれてしまった。でも、さっきまで怒ってたママまで笑ってるから、ま、いっか。

みんなの笑いがおさまったあと、ツキノワ君がこう言った。
「そうですねぇ、仕方がないからこれまでの7日分はみんなのスケッチを見せて、橋之介君に写してもらいましょう。方角からいうと、カーチャちゃんの家からのスケッチがいちばんあてはまるような気がするけど、まああんまり違いはないし。その後は、ちゃんと毎日やってもらいましょう」
「賛成~!」みんなが同意してくれた。
「みんな、ありがとう~」ボクはちょっと目がうるんできちゃった。友だちっていいなぁ。
「じゃあ、明日うちに来ないか?みんなで理科の宿題を持ちよって。ついでに、ツキノワ君に算数のわかんないとこを教えてもらおうぜ」ホッキョク君が提案した。
「あら、それならうちにいらして。橋之介が悪いんですもの。おやつに腕をふるうわ」ママが申し訳なさそうに言う。
「いえ、実はみんなに見せたい新作ゲームもあるんです」ホッキョク君がちょっと恥ずかしそうに言った。「それに、ブルース兄さんもみんなに久々に会いたいって」
「そうなの。じゃあ、よろしくお願いします。何かおやつを橋之介に持たせるわね。橋之介、パパの特訓の代わりに、ちゃんとみなさんとお勉強するのよ」また、ママにダメ押しされちゃった。  
あー。でも、ほんとにじ~んとしてきた。みんなすっごくいい友だちだ。みんなとずっといい友だちでいるためにも、学校の勉強もちゃんとやらないとね。  
めげずにがんばるぞう!
 
今日のきょうくん(教訓)
交互にラフすることをクロスラフという。
ふんだり、けったり(ぶたない)。
学校のお勉強はとっても大切。
友だちはいちばんの宝物。
 
 

 

 

 
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