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橋之介のブリッジれぽーと

橋之介のブリッジれぽーと(14)


 

 

 

スキー&リードのお勉強:その2
こんにちは、橋之介です。いよいよいちばん寒い季節だね!ボクたちはクマだからこのくらいの寒さは平気だけど、なんだかすぐ眠たくなるんだよね。クマの本能で冬は眠いのかな。でも、都会のクマは冬眠なんかしてられない!学校に、スポーツに、ブリッジに、楽しいことがたーくさん。今回はちょっと変わった場所へお出かけだよ!

 

 
冬休みが終わったと思ったら、もう2月。寒さもきびしくなってきたから、あったかいお部屋でブリッジしてるときがいちばんシアワセだ。ほかほかココアと肉まんがあったら、もう天国。土曜の午後、ぬくぬくぽかぽか過ごしてたボクに、ママが声をかけてきた。
「橋之介、次の週末にスキーに行くわよ。お友だちも誘っていいわ。ロッジを予約するから、みんなに予定をきいてみて」
北海道育ちのママには、横浜の冬なんか、ほんとの冬とは思えないらしい。ボクんちでは、ひと冬に何度か家族でスキー旅行に出かけるんだ。小さいころから連れ出されてるからボクも一応すべれるんだけど、スキー場よりロッジのあったかい暖炉のほうが好きだなー。だけど、今年は友だちと行けるみたい!善は進め、じゃなかった善は急げ、みんなに連絡しなくっちゃ。
学校の仲間たちに電話すると、みんな大喜びで参加することになった。車がもう1台いるから、運転手としてホッキョク君のお兄さんのアーノルドさんも来てくれるんだって!スポーツ万能のホッキョク君兄弟は、きっとスキーも上手なんだろうなあ。とっても楽しみだよ!
 
「橋之介君、見直したわ。上手にすべるじゃない」エリーちゃんに背中をバンとたたかれて、ボクは思わずしりもちをついちゃった。「あいててて。だから、すべれるって言ったでしょ?信じてなかったの?」
ボクたち家族にはおなじみのゲレンデに、ツキノワ君、カーチャちゃん、エリーちゃん、ホッキョク君兄弟が勢ぞろいして笑ってる。まわり中が真っ白で、太陽の光をあびてまぶしいくらいに光ってる。パパと一緒にくだってきたウィニーが、きれいなカーブを描いて目の前に止まった。
「ワタシも上手になってきた!いまパパとてっぺんからおりてきたの。一度も転ばなかったわ」
カーチャちゃんがニコニコしてウィニーの頭をなでた。「おばさまはどこなの?」
「いちばん奥の、とんでもなくオソロシいコースを楽しんでるよ。ここへ来ると、いつも夕方まで帰って来ないんだ。スキーは、なんたって子供のころから鍛えてるからね」やれやれ、と頭を振りながらパパが言う。ボクは大きくうなずいて提案した。「みんなおなか空かない?何か食べに行こうよー。スキーってとってもおなかが空くよね!」
スキーも嫌いじゃないけど、ゲレンデで食べるお昼がまたサイコーなんだ。今日はぜったい、あつあつのラーメンだな。それからおでんとソーセージにベークドポテト、最後にソフトクリームで仕上げだ。考えただけで、お腹がぐうぐう鳴っちゃった。「そうするか。橋之介のおなかが催促してるからな」パパが賛成してくれたので、ボクたちは歓声をあげてレストランに向かった。
 「みんな、たっぷり楽しんだ?疲れちゃったかしら?」1日すべってロッジで特大ステーキの夕食を平らげたあと、ぱちぱち音をたてる暖炉の前でくつろぎながら、ママがみんなを見わたした。
「とっても楽しかったです!」「おもしろかったわ」みんな目をキラキラさせて返事した。うん、みんな、なかなか上手だったもんね。ツキノワ君だって、東北にいるおじいちゃんのところで習ったといって、派手じゃないけどしっかりしたスキーを披露したし、ホッキョク君兄弟はママに負けないくらいカッコよくすべってた。エリーちゃんも、カーチャちゃんも、上級者向けのコースに挑戦してたしね。もちろん、ボクだって楽しんだよ。スキーも、美味しい食事もね!
「みんな喜んでくれてよかったわ。さて、それじゃ、夜のお楽しみの時間よ。せっかくみんなそろったんだから、ブリッジをしましょうか。疲れてなければだけど」ママが言うと、「うれしい!お願いしまーす」とエリーちゃん。「体中の筋肉を使ったから、今度はアタマの筋肉も使っとくか」とホッキョク君もやる気まんまんだ。
ホント言うと、ボクはおなかいっぱいでトロトロ眠くなりかけてたけど、みんながこんなに張り切ってるのに、寝るわけにはいかないよね。スキーではみんなに感心してもらったから、ブリッジだっていいとこ見せちゃうぞ。
みんなでテーブルを囲んで、ロッジのリビングルームは、ママのブリッジ教室に早変わりした。
 
ボクたちは早速、カードドローをして、席についた。ボクのパートナーはエリーちゃん、もう1ペアはツキノワ君とホッキョク君だ。抜け番はカーチャちゃんだけど、抜け番のあいだ、パパとウィニーとホッキョク君のお兄さんのアーノルドさんと4人で、ミニブリッジをすることにしたみたい。ウィニーは、アーノルドさんにミニブリッジを教えるんだって、張り切ってる。 ボクたちの方は、今日はミニブリッジじゃなくてママに習っているコントラクトブリッジをやることにしたんだけど、始める前にママがみんなに声をかけた。「前にリードのお約束を少し勉強したわよね。みんな、覚えてる?」「絵札が3枚以上続いているときには、いちばん上のカードをリードする!」ホッキョク君が即座に答えた。「ただし、AとKが両方あるときは例外でKを出す」ツキノワ君も、すかさず付け足す。みんな、すばやいなあ。「そう、よくできました。でも、いつも連続した絵札を持っているとは限らないでしょう。だから今日は、そうでないときに何をリードするかを覚えましょう」 ママが続ける。みんなも、真剣なまなざしで聞いてる。
 
図1
「3枚以上続いた絵札がなくて、しかも4枚以上あるスーツから何かをリードしたいときには、上から4番目に大きいカードを出しましょうね。例えば、 と持っていたら、上から4番目のを出すのよ」「なぜ、4番目なのですか?」隣りのテーブルで聞き耳を立てていたカーチャちゃんが、ママに質問した。いまお隣りでは、ウィニーが一生懸命にアーノルドさんにミニブリッジの遊び方を説明してるところみたい。
 
「これも、リードの約束ごとのひとつなの。4番目に大きなカードをリードするから、フォースベスト(4th best)っていうのよ。文字通り、4番目って意味よね。でも、4番目を出すといいことがあるのよ。それは、実際に少しみんなでプレイしてみてから、考えてみましょうね」ママが答える。「とにかく1度やってみてちょうだい。説明するときには、こちらに呼びますからね、カーチャちゃん」ママの合図で、ボクたちはカードをシャッフルして、さっそく最初のハンドに取りかかった。コントラクトはツキノワ君の4、つまりのゲームだ。オープニングリーダーで、ボクのパートナーのエリーちゃんは、をリードしてきた。ダミーのホッキョク君からは、こんな手が出てきた。
 
のリードに、ディクレアラーのツキノワ君はをプレイ、ボクは何を出そうか迷っちゃった。えーっと。さっきママが教えてくれた新しいお約束だと、エリーちゃんは上から4番目に大きなを出したってことだよね?ってことは、よりおっきなをエリーちゃんは3枚持ってるんだ。それは何かなぁ?まあ、いっか。とにかく、小さいを出して、ツキノワ君のに勝たれちゃうと損しちゃうから、ボクはを出そうっと!
ツキノワ君はでオープニングリードを勝つと、切り札のを出してエリーちゃんのに負けにきた。その後、ツキノワ君はのほかにでひとつずつ負けたけど、それ以外はぜんぶ勝って、4はジャストメイクだった。仕方ないよね、ツキノワ君が上手だったんだから…。
 
「ねえ、橋之介君。もしかして、私たち、このコントラクトを落とすことができたんじゃないかしら?」エリーちゃんがボクに話しかけてきた。「えっ、そお?そうかなぁ~?」ボクがしどろもどろになってると、「そのとおり」とツキノワ君の自信にあふれた声が聞こえてきた。
「もし最初のトリックで、橋之介君がを出さなかったら、ボクはでも1トリック負けることになって、つまり、すべてのスーツで1トリックずつ負けることになって、4を作ることはできなかっただろうね」ツキノワ君が解説してくれる。
 
「そして、橋之介、よーく考えれば、ツキノワ君が持っているの2枚だということが、あなたにはわかったはずなのよ」ツキノワ君の解説にママの声も加わった。
「えー?どうしてそんなことがわかるの?」ボク、また頭がパンクしそう…。
「では、いまプレイした手を全員広げてみてちょうだい。カーチャちゃんも、こっちにいらっしゃいな」ママがみんなに声をかけた。
 
「エリーちゃんはをリードしたけど、これは、エリーちゃんが持っているの中で4番目に大きなカードだっていう約束だったわよね。ここまでは、いい?」「はい!」みんなが声をそろえる。「ところで、より大きなは全部で11枚あるはずよね。そのうち、3枚はエリーちゃんが持っているから、残りは8枚ということになるわね」みんな、真剣なまなざしでママの話に聞き入ってる。 「じゃあ、橋之介、この残りの8枚のうち、ツキノワ君が持っているのは何枚?」ひょえー、ママに質問されちゃったよ!どうしよう…。「えーっと、ダミーの だからより大きなが3枚、ボクの手の中にあった4枚のも全部 より大きいからこれで7枚」ボクはようやくわかった。「あっ、じゃあ、ツキノワ君は1枚だ!」
 
「よくできました。そして、そのカードはたぶんだということも、わかるはずよ。どうしてかしら?」ママがさらにたずねる。「スーツコントラクトでは、を持っているときには小さなカードをリードしない、という約束だからです」エリーちゃんが胸を張って答えた。
「正解よ、エリーちゃん。自分が最初にリードする立場だったから、そういうこともきちんと考えていたのね。えらいわー」ママが目を細めながら、エリーちゃんにほほえんだ。
「そして、たぶんツキノワ君にはもう1枚があるはずだから、それはより小さいカード、つまりだってことがわかるわけね。すごいわ!」カーチャちゃんも、感心した様子でうなずいている。
「そのとおり!さもなければ、エリーちゃんが5枚目の、つまりを持っていることになるわね」みんなよくわかっているようなので、ママもうれしそうだ。でも、あのう~。ボクは、いまいちよくわかってないんですけど…。
そんなボクの気持ちを察してか、ママがさらに続けた。「連続した絵札のないスーツからはフォースベストをリードする、というのはいいわね」うんうん、このお約束は大丈夫。
「そして、フォースベストのリードのときには、11からリードされたカードの数を引いた答えが、リードした人以外の人が持っているそのカードより大きな数の合計枚数になるの」うーん…。また、ややこしくなってきったぞう。あれれ?でも、他のみんなはわかってるみたい…。こりゃー、まずいぞ。ママは説明しながら、ロッジで借りた黒板に式を書いていった。
 
 
エリーちゃんはをリードしたから、11から3を引くの。すると、その答えは8になるでしょ」うんうん、それはわかる。
「これが、エリーちゃん以外の人、つまりダミーのホッキョク君、橋之介、ツキノワ君が持ってるより大きなカードの合計枚数なの」
「そっかー。ホッキョク君が3枚、ボクが4枚、ツキノワ君が1枚で、合計8枚ってわけだね!」ボクはようやく飲み込めて、手をたたいた。「そのとおりよ。そして、この法則はフォースベストのリードのときには、いつでも成り立つの。もしがリードされたなら11引く6、なら11引く8という具合にね。11から引き算するから、『ルール・オブ・イレブン』と呼ばれているのよ」
「そうすると、ディクレアラーの手がある程度読めるから、3番手で何をプレイするかのヒントになるってわけだね」めずらしくいままで口をつぐんでいたホッキョク君も、ついに会話に加わってきた。「例えば、さっきの橋之介の場合は、ツキノワのの2枚と読み切れれば、ダミーから4が引かれた後には5をプレイすればよかったってわけなんだね」
「うん、すごいね!」ボクもなんだかコーフンしてきた。「最初は、すごくむずかしく感じたけど、要は11からリードされたカードの数を引けばいいってことだね。こりゃー、目から毛皮だ!」
ん?なんか、みんなの視線が冷たいけど、またまちがえたかな?
「それを言うなら、目からウロコだろう!ったく!」パパに頭をぽんとたたかれちゃった。いつのまにか、あっちのテーブルにいたみんながこっちに来てる。
「あはは、橋之介君は本当におもしろいなあ。弟のブルースから聞いてた以上だ」あーあ、ホッキョク君のお兄ちゃんにも笑われちゃったよ。とほほ…。
 
 
「今日はみんな疲れてるから、このくらいにしましょう。寝る前にあったかいココアを飲む人は?」ママの声で、みんな名ごり惜しそうにテーブルの上を片づけ た。外はいちめんの銀世界、スキー場のロッジでみんなとブリッジするなんて最高だったけど、やっぱりそろそろベッドが恋しくなってきたよ。見まわすと、みんなもなんだか眠そうだ。
そういえば、ウィニーはさっきパパに連れられて、ひと足さきにベッドに行ったみたい。
「ああ、疲れたあ。あしたは身体もアタマも筋肉痛になりそうだよぉ」思わずつぶやいたら、「なに言ってるの、橋之介君!あしたはスノボを教えたげる!」って、エリーちゃんに突っ込まれちゃった。
ひえー、今夜はゆっくり寝ておかないと、あしたもハードかも…。「ルール・オブ・イレブン」を復習したら、すぐに眠くなるかなぁ。なんだか、ぐっすり眠れそうだよ。
 
今日のきょうくん(教訓)
連続した絵札のない4枚以上のスーツからリードするときには、上から4番目に大きいカードを出す(フォースベスト)。
☆ フォースベストのリードのときには、ルール・オブ・イレブンの法則が常に当てはまる。
 
 
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